モントリオールのプロデューサー Jeremy Petrus によるプロジェクトの1st。えげつないくらい低音が効いた真っ黒でファンキーなハウス、ってことでよろしいでしょうか。ミニマルで疾走感のある曲アリ、重心を低く取ってぐりぐりうねる曲アリ、ヴォーカルサンプルを切り刻んでこっち方面に疎い身にはまったく未知のリズムを作る曲アリ、ダビーでもこもこした音像にストリングスを絡める曲アリ……と、あくまで実用本位と思われる作りで「聴く」事は最優先ではなさそうでありながらも曲ごとのバリエーションがきっちりあって、どの曲もトリッキーな面があって、楽しい。色々と緻密な細工が凝らされていて、鳴っている音全てで立体的なリズムを作っているところなんかは素人耳にも見事なんだけど、殆どブルータルな域に達しているヘヴィな低音をぶんぶん唸らせながらしなやかに駆け抜けるような、肉体的かつ感覚的な感じが基本になっているのがとても良いなあと思ったのだった。
■■■ Six by Seven/Club Sandwich at the Penveril Hotel (2006)
解散直前(直後かもしれない)に発表された Six by Seven の置き土産。1st〜4thまでのどれとも異なる音楽性を持っていて、恐ろしく分厚いギターノイズの壁が可聴/可視領域を覆い尽くし、その中を甘くドリーミーなメロディがゆらゆらとサイケデリックに浮遊するさまは、実は彼らのアルバム中で最も「シューゲイザー」のイメージに沿うもの。解散直前の状態とは思えない気合の入りよう、とことん作り込まれたサウンド・オブ・ウォールとラウドでヘヴィなリズム隊は非常に格好良いものの、なんだか今までにあった毒気や邪悪さが足りんなあ……と言った按配のアルバム前半と対照的に、いきなりガチで Motorhead やりだしたりダークなエレクトロ交じりのエグい曲を繰り出したり殆どストーナーな曲があったり、と後半では人が変ったかのようにやりたい放題。結局最後の最後まで外れもののバンドだった事が改めて解る出来で、これまた好きな人はとことんハマれる一枚だと思う。
■■■ VOLA & The Oriental Machine/Android 〜like a house mannequin〜
元 Number Girl/Zazen Boys のドラムス、アヒトイナザワがギターヴォーカルを取る4人組バンドの1stフルアルバム。どうも以前のミニアルバムは中途半端な印象だったが、本作はかなり吹っ切れて突っ走っている。思い切りニューウェーヴ〜ディスコパンク調なバンドサウンドは強いオリジナリティこそないものの恐ろしく鋭角的で低音が効いていて格好よく、メロディとバンドサウンドの一体感も明らかに増していて、勢いに乗っているのを強く感じさせる仕上がり。いくらなんでも無茶なテンションの高さを持つ冒頭2曲でツカミはばっちりだし、ポップだったりわざとらしくエキセントリックだったりするメロディがより耳に残るものになっているのもとてもいい。アヒトイナザワのヴォーカルは相変わらず弱いが、快楽指数が高いグルーヴを一気に聴かせるパーティロックアルバムの快作だと思う。