驚異的なトータリティを誇った前作「Be」から一転して、音楽的には Faith No More を思わせるようなとっ散らかり具合になり、ある意味では1stの頃へ原点回帰を果たしたとも取れる6thアルバム。不気味に明るいカントリー風の#4「America」、見事なまでにB級ディスコ風味を取り入れて何者かに対する嫌悪感をブチ撒ける#5「Disco Queen」を筆頭に、メタルでもメタル以外の何かでもないエキセントリックな曲をバラバラに配し、最初に書いたような事を表現しようとしている。なんだか、整然とドラマを展開していたここ数作と比べると、今回はわざと時間軸と舞台をランダムに並べ替えた演出の映画みたいな手触りだ、と感じた。
安いスクリーモ、無法な勢いでまくしたてるラップ紛いの説法、聖歌などを無節操に取り入れる事で、あらゆる場所や時間軸を巡っては絶望したり疲れ切ったりする、そんな光景を相変わらずのダウナー具合で展開している。凝り倒した無茶過ぎるアレンジ、情報量の多さはやはり異常だが、今回は露悪的な印象が強く嫌悪感や閉塞感がストレートに出ているせいで、これまでになく直接的に心が揺さぶられるような感じ。聴き手の感情を突き動かす力はとても大きい、と思った。その一方、絢爛にしてげんなりと言うバンド固有の魅力は割と後退しているし、もうちょっと脇を締めた方が良さそうな冗長さもそこかしこにあるんだけれども、個人的には冒頭の一言をキーワードにして聴くと、最初から最後まで筋が通っているように感じられてたいへん良い感じでありました。
前作とはまた異なる意味で非常に挑戦的な作風だとは思うが、今までの聴き手をふるいにかけたり踏み絵を踏ませたりするような悪意は感じないし、メロディの躍動感や美しさは基本的に変っていないし、むしろ出している音に滲む真摯な姿勢と痛切なまでの焦燥感は今まで以上だと思う(そうである分だけ、捻れまくった底意地の悪さもまた出ているんだけれども)。あちこちに散らばったパーツを拾い集めてじっくり対峙するような、そんな聴き方のが出来る一枚。このバンドに期待を裏切られた事は今までなかったが、本作でもそれは変らないです。